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豊がそう言うと葵は困った顔になった。喜んでもらえるとまで自惚れてはいなかったが困らせると思ってもなかったのでその反応に驚きつつ、豊はさらに伝える。
「責任感じてとかじゃないよ。仕事も関係ない。ただ葵の事が好きなだけ。上手くいく自信もあるよ。このままずっとプライベートでも一緒にいたい」
馬鹿じゃないの、と顔をしかめた葵の瞳は涙に濡れていた。
「……豊とは付き合う気ないよ。初めからそういう話だったじゃん」
「あの時とはもう関係性が違うでしょ。言葉にしてなかっただけで、こんな生活恋人同士がするやつじゃないの」
毎日一緒のベッドで起きたらキスして、寝る前にもキスして眠りにつく。こんなにも誰かと近しくなったのは豊にとって初めてだった。葵は黙ったまま部屋に戻り、鍵を閉める。ノックしても開けてもらえなかった。そして次に部屋から出て来た葵は大きな鞄を手にしていて、豊を無視して玄関に向かう。
「ッ待ってよ! どこ行くの」
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