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葵は背を向けて靴を履きながら答えた。
「……レージのところ」
「ッ何で玲司さんのところに行くの。いてよ。葵を困るならさっきみたいな事はもう言わないから」
引き留める豊に葵は言った。
「もう……やめて。なに考えてんの。豊、変だよ。頼むからもう、明日のライブのことだけ考えさせて。これ以上頭、ゴチャゴチャにさせないで! こんなプライベートな事が理由で1つでもミスしたら自分の事が許せなくて死にたくなる」
葵は他人にも厳しいが、その実自分自身には1番厳しい。
「俺にはいつも通りに成功するビジョンしか見えない」
「……無責任な事言わないで。もう、話したくない」
豊がなにか言えば言うほど怒らせているし、どんな言葉も行動もたまらなく独りよがりに思えてこれ以上重ねるのは憚られた。葵はそのまま、逃げるように出て行った。後も追えず、豊はソファに座り込む。今自分とは話すのも煩わしいかなと思いラインで謝ったが、既読すらつけてもらえなかった。そして朝になっても葵が帰ってくることはなかった。
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