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――…祈るような気持ちで控室のドアを開けると、葵がいたので豊はひとまず安堵した。話したい事はたくさんあったが、また自分のデリカシーの無さが葵を怒らせるのではと躊躇われて挨拶に留める。父親の件を実光に知らせなかったのは正解だった。おそらく実光も事を知れば、性格上きっと昨日の豊のようなおせっかいを言っただろう。葵はほんの少し瞼が腫れていたが、ライブ中は雰囲気を重視して暗めのライティングなので問題はない。ライブの開演時間が迫り控室で実光が、パン、と自分の両頬を張った。
「う〜〜緊張してきた〜〜〜!! 葵、凄いな。いつも全然緊張してなくて」
何も知らない実光にそう言われた葵はいつも通りの余裕綽々な顔で、まぁね、と答えていた。
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