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2日目の東京公演を終え、豊たちは札幌に飛行機で飛んだ。移動日はオフなのでツアースタッフと親睦会をかねて夕飯を食べに行くことになった。大人数が苦手な葵はパスしたので、葵抜きのメンバーで居酒屋を半分貸し切った。1軒だけで解散してホテルに戻った豊は葵の部屋を訪ねようとして、やめた。豊は仕事の場以外での葵との距離を測りかねていた。何しろ全力で迫って拒まれたのだ。豊は付き合った人数こそ多いが、押しに負けて付き合って、なんとなく別れて、という流れに身を任せるような恋愛しかしたことが無い。まともに好きになったのも拒まれるのも初めてでどうしていいかわからなかった。札幌公演の2日目も無事に終えた日、豊は実光から声をかけられた。
「お前、大丈夫か?」
身に覚えのある豊はびっくりして聞き返す。
「え! ごめん何か変だった?」
「違う違う。じゃなくて〜……」
実光は声を潜めて豊に耳打ちした。
「豊、ライブの゙後めちゃくちゃヤりたくなる癖あるじゃん。東京なら相手いくらでもいるだろうけど、これからずっと地方だろ。ナンパしたら引っかかるだろうけどさぁ〜……トラブルは無しにしろよ」
実光に言われて自身の異変に気づく。ライブは最高だったし興奮したが、全くそんな気分にはなれない。
「大丈夫……。今悟り開いたくらい性欲無いから」
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