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したごころ
「さあゴン助、いいな!」
「ワン」
「頼むぞ、お前に掛かってるんだからな」
「ワン」
「お前が天才だと俺は信じている」
「ワン」
「そこは”ヤン”って言ってくれると助かるんだけどなぁ…」
「ワァン」
「おっ!」
ちょっとそれっぽい気もする。
ここで俺の期待に応えるかのように吠え直すところが、俺はゴン助の凄いだと思っている。これは、絶対に俺の意図が通じてるとしか思えない。
ゴン助は普段から結構そう言う行動を俺に見せて来る。
見栄えのしない薄茶色の中型犬。それも特徴に欠ける雑種。人に雑種だと言えば蔑んで見られてしまう。
でも、もし我が愛犬ゴン助が”言葉を喋る”ことでバズレば、雑種も見直されるのではないか?俺はそう思っている。
それは、こいつの名誉の為にもなるし…。
と言えば犬を愛する優しい飼い主に見えるのだけれど、それは残念ながら後付けであって、本当は俺の個人的な強い思惑であったりする。
でも、理由は何であれ俺の本心を知らない傍から見れば結果が全て。何としても俺はこいつに人間の言葉を教え込もうと思っている。
本来こんなことは有り得ない話なのだが、不思議と全く疑っていない自分がいるのだ。
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