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作戦
俺は早速、彼女とお近づきになる作戦を考えた。その手順はこうだ。
1.まずはゴン助に何としても言葉を教える。
とんでもないことを簡単に言ってるようだが、ゴン助の能力、それに、もしも俺と矢井田さんの間に運命の繋がりがあるのならば、この程度の障害はクリア可能なはずである。
2.その最難関の障害をクリア出来てしまえば、そこから先は突き進めばいい。まずは、彼女のところに交通費,諸経費の清算に行った時にゴン助の芸の話を振ってみる。
精算処理の時限定ではあるが、既に彼女とは若干の世間話は経験済み。犬好きの彼女相手であれば、こんなことくいらは朝飯前の快便程度に楽勝である。
3.そして、その会話の中で爆弾発言。「実はうちのゴン助、喋るんですよ」と。
それを聞いた彼女が平静でいられるはずがない。絶対に驚いて鰐のように喰いついて来るに違いない。
4.だが、ここで話しを終えてしまっては、単に驚くだけで終わってしまう可能性が高い。ここは、ダメ押になる切っ掛け作りが必要だ。そこで俺は、今度SNSを始めたいと言う話をする。
すると飼い犬の芸で負けた彼女は、既にSNSを始めていると言う優越感から、俺にマウントを取りたくてウズウズするはずに違いない。
これで”ゴン助の芸が見たい”と言う欲求と”SNSのあげ方を教えてマウントを取りたい”と言う二つの目的が揃うことになる。
この二つを達成する為に手っ取り早いのは何か?と言うと、それは我が家に来ること以外にあり得ない。
俺が変な下心さえ見せなければ、彼女は自ら我がアパートへの道を歩んでしまうことになるだろう。
家に招き入れることさえできれば、後は喋る犬、ゴン助様のお力で畳みかける。
そして、その後は・・・と言う事に。
完璧である。これ以上ない完璧な作戦である。
と言う事で、只今その第一歩目の喋る犬への挑戦を始めたところなのである。
まずは彼女の心をしっかり掴むには、彼女の名前を喋ることは必須と俺は考えている。彼女の名前”やいたいりや”たった4文字でいいのだ。
先ずは一文字目の”や”から始めようと思う。
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