イタリヤ

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イタリヤ

「ゴン助、”イ・タ・リ・ア”だ。言ってみろ」 「イォ・ゥワォ・ォゥン・ヤゥ」  しかし、ここまで順調だったのが嘘のように、さらに2カ月が過ぎたが未だ”イタリア”は遠い異国のままだ。  最初の”イ”は確実に聞き取れて、最後の”ア”は”ヤ”でも、まあ好意的に聞けば国名として聞き取れるので妥協もできる。後は真ん中の2文字の”た”と”り”だが、全くこれを発音することが出来ていない。犬にとって、連続発音は相当難しいようだ。  現状、まだまだ我が家と彼女の距離は遠いようである。    さらに2ヵ月が経った。ゴン助は少し太って来た。ご褒美と、やる気ののおやつを与え過ぎたせいだろうか。体に丸みを帯び出来た。 「デブ助、女性に来て欲しくないのか?部屋の香りが変わるんだぞ。いいか、イ・タ・リ・アだ。イ・タ・リ・ア」 「イォ~タゥァウヤゥ」 「おう、スゴッ。いきなり一文字前進」  俺はそこからおやつを餌にすることをやめ、女性が我が家に来ることの素晴らしさをゴン助に説いて練習を続けた。そんなことで2週間後、 「イ・タ・リ・アだ」 「イ・タゥァ・ワゥォ・ヤゥー」  犬のくせに人間の女性が相当好みなようで、さらに一歩前進。  かなり声帯が慣れて来たのを感じる。 「ゴン助、イ・タ・リ・ヤゥー」 「イォ・タォ・イィン・ヤゥー」 「イォ・タォ・イィン・ヤゥー」  おっ、結構良い感じになって来た。
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