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「い~、いつも入力早いですね」
「そうかなぁ、そんなに速くないと思うよ」
”いぬ”の二文字を言いそこなって誤魔化す俺。次こそ。
「い、い、いつも。じゃなくて今回は沢山貯めてすみません」
「大丈夫よ、このくらいは普通だから」
一文字目の”い”は出せるが、二文字目”ぬ”の文字が喉に詰まって出てこない。これではゴン助に劣ってしまう。なので、ここは思い切って口を先に”ぬ”に動かしてから声を出してみる。
「い、い(ここで口を”ぬ”の形にして)ぬぅ飼ってるんです」
言えた。言えた”ぬ”が言えたけど会話の繋がり的に唐突過ぎる。
「わんちゃん飼ってるんだ」
彼女は唐突な俺の会話に、手を止めてこちらを向いてくれた。その目がダイヤモンドの様に輝いている。不自然さも突っ込んでは来ない模様。
「そうなんです。うちの犬は凄いんですよ、言葉が喋れるんです」
あっ、すらすら言葉が出て来るぞ。喉に詰まっていた”ぬ”の文字が出たせいか、饒舌になっている。
「うっそ、ホントに?」
「これが、ホントなんですよ」
「私もわんちゃん飼ってるんだけど、芸一つすらなかなか覚えてくれなくて、今、”待て”を教えてるんだけどね。5秒も待たないの。
そのわんちゃん賢いのね、犬種は何なの?」
「いや~、それが雑種なんですけど。ああ、ちょっと動画あるんですけど見てみます」
ここでは、雑種に気を取られ過ぎない様に直ぐに流す。
「みるみる!」
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