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パンダじゃなくてゴリラ
「いやぁぁぁぁ!野生のゴリラぁぁぁ!!」
「誰が野生のゴリラじゃ!」
私はあまりの驚きにバナナの皮で滑ったかのようにひっくり返った。
私は休日の決まった時間に口寄せの術で呼び出したパンダのリーリーちゃんに吸い付くことで生きている。リーリーちゃんの感触、匂い、声、目、全てにおいて愛おしさがカンストしている。
今日もいつものように口寄せの術を使って呼び出したリーリーちゃんに抱きついた。そのつもりだった。しかし、すぐに違和感に気づいた。
あれ?感触が違う。そもそもサイズがデカいし、抱き心地ももふもふというよりかはふさふさで、むにむにというよりかはゴツゴツで…
嫌な予感がして恐る恐る顔を上げる。
ゴリラだ……
あまりのショックに、そのゴリラが私達に忍術を教えてくださってるコンガ先生だと気付くのに時間がかかってしまった。
「コッ、ココッ、コンガ先生!?どうしてここに?」
取り返しのつかないことをしてしまった。冷や汗が体中から吹き出してくる
「それは僕も聞きたいよ!家でウトウトしてたら急に知らないところに飛ばされて、気付いたらこの有り様だよ。」
先生は少し笑いながら答えた。これは機嫌が悪くないときの先生だ。そう安堵していると、先生は言葉を続けた。
「いやぁ、それにしてもシャオランにこんなかわいい一面があるなんて意外だなぁ。私はてっきり…」
「やめて!!」
私は言葉を遮った。ハッとして、とたんに恥ずかしくなって手で顔を覆った。こんな慌てている姿、誰にも見せたことなんてないのに。
「このことは他の誰にも言わないでください!今度何か奢るので!!」
私は甲賀忍者界では冷静沈着で名が通っている。こんなことを他のみんなが聞いたらどう思うか。たまたま今回出てきたのが先生だったから良かったもののもし咲耶が口寄せされていたら…考えただけで震えが止まらなかった。
「まあまあ、そんな大袈裟なこと言わなくても。安心しなさい。このことは他の誰にも言わないから。」
「本当ですね?」私は念をおした。
「本当だよ。約束する。」
私は安心して力なくその場に座り込んだ。ずっと気を張って説明していたせいか、疲れが体中にどっと押し寄せてきた。
はぁ……この疲れを癒やしたい。そうだ。リーリーちゃんを接種したい。こんなときこそリーリーちゃんを吸わなくちゃ。なんで気が付かなかったのか。はやくリーリーちゃんを。リーリーちゃんリーリーちゃんリーリーちゃんリーリーちゃんリーリーちゃんリーリーちゃんリーリーちゃん
「大丈夫か?」
先生の声で我に返る。まずい。リーリーちゃんを長時間接種してないせいで禁断症状が出てしまった。私は大丈夫です、と軽く答えてからなんでこんなことが起きてしまったのかを説明した。
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