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「あのお二人はどこへ飛ばされたのでしょうね。」
フェーンが辺りを見渡す。小高い丘の上らしく、景色はいいが見えるものはどこまでも続く空だけだ。
「確かに、心配だな。」と言いつつも、(このまま見つからなければいいのに)と心の中で思うギーマ。
顔はそれを隠しきれなかったらしく、フェーンが小首を傾げている。ギーマは慌てて笑顔に戻す。
「それにしても強い魔物でしたね!次に会うときには私がもっともっともーっと強くなって倒しますよ!」
フンフンと拳を前に突き出しながら素振りをする。風を切る音はまだまだ小さいが、いずれもっと強くなるだろう。
「頼もしい限りだな。」
「(めちゃカワ)」
仲間を認めているという寛大な顔をしようとしているのに、心の声が少し邪魔をする。精悍な顔が歪む。
「ギーマ様の魔力でお二人の居場所が分かったりしないのですか?」
軽いジャブを止めてフェーンが尋ねる。
「それは、難しいな。」
「(あの二人の為に魔力を使うの怠い)」
ここで言う難しいとは、そういった魔法が難しいのではなく、そのための気力を湧き立たせるのが難しいということだ。
「それでは仕方がありませんね。ギーマ様!まだ頼りにならない私ですが、ギーマ様のことを守らせてくださいね。」
自分の方がまだまだ冒険者としては新米とはいえ、パーティーに加入したのはフェーンの方が先であるため、先輩風を吹かそうとするフェーン。頭一つどころか二つほども違うギーマを見上げて言った。
「よろしく頼む。」
「(俺が全力で守る)」
「まずは、人のいるところに出よう。ここが何処かを知りたい。」
フェーンの決意を聞いたところで、さっと身をひるがえし辺りを見渡し始めるフェーン。大体の場所の見当はついていたが確証はなかった。
「そうですね、こんなところで突っ立っていたままでは何も進めませんからね。あ、あちらから煙が立っています。人里みたいですね。行ってみましょう。」
ギーマと同じく辺りを見渡したフェーンが、遠くに細くたなびく煙を発見した。田舎育ちで山に囲まれた村で育ってきたフェーンの視力はかなりいい。
「よくやった。」と、ギーマがフェーンに言うと早速その方向へ向かい始める。
(このまま2人っきりとか心臓が持たん。でもこれからはフェーンと二人っきりか。心臓を強化する魔法でもかけておこうか。)と、考えていると、
「ギーマ様、胸を押さえてどうしたんですか?もしかしてお怪我を?」と、フェーンが心配がって駆け付ける。
「いや、何でもない。」
本当は何でもなくなくて、近くに来て良い匂いだなとか、目がデカくて可愛いなとか、いろいろ煩悩が破裂しそうだった。
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