プロポーズ編

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 和人のところに行っていた間は元々発情期休暇が申請してあった期間で問題はなかった。だけど、その間に和人が色々手を回していたようだ。 「……これって、私の退職届ですね」  定型文になっている既定の退職届には僕の名前が記入されていた。 「メールで届いたぞ」 「そんな簡単に受理されるようなものでもないでしょう」  ため息をついて紙をファイルにしまった。  桐生が保留と言っていた意味が分かった。 「それで? 和人と日本に行くのか?」 「それもまだ保留というか……和人がもう動いているんでしょう?」  強引でマイペースな和人。  それで助かっている部分は確かにあるけど、振り回されるのは困る。 「確かにそうだが、はっきり断ってもいいんだぞ」  断っても『運命の番』だ。離れると頭痛や吐き気を再発するかもしれない。  体調不良は遠慮したい。  紅茶の入ったカップをソーサーに戻してじっと見つめる。 「今まで桐生のことを運命の番だってずっと思ってきたし、桐生にふさわしくあろうって努力してきた。資格も取った。和人と会って全然違うって分かったよ。本当、運命ってなんだろうね」
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