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 真っ白なベッドは、女の子を描くキャンパスだ。シングルベッドであろうとも、男が一人で寝るという使い方は本質的に間違っている。女の子を迎え入れてその子色に染めることによって、ベッドは初めて本望を遂げるのだ。  彼女の腹の上にまたがり、部屋着のボタンに手をかけた。   「ダメ……」  か細い声を漏らしながら、僕の手首を掴む。けれど、力はほとんど込められておらず、形ばかりの抵抗であるは明らかだった。脈打つ血管から、僕を求める情動がどくどくと伝わってくる。    胸元のボタンを外せば、現れたのは淡い水色のブラジャー。薄っぺらいこの布が、彼女の秘密を守る最後の社会性だ。  くねりくねりと動く美しい体躯にこの上ない興奮を覚えつつ、下着越しに彼女の膨らみに触れた、その時。  玄関から、ドアの開く音が聞こえた。  ……え。  全身の皮膚に、ぞわりと危機感が走る。  この家の鍵を持っている人間は、僕を除けば一人しかいない。  右手を彼女の下着に乗せたまま、音のした方に視線を向ける。 「(みお)……」  遠距離恋愛中の恋人・澪は、氷のような表情で僕を見て、ひとこと。 「久しぶり、晶良」
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