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 男、とりわけ異性愛者の男に生まれる一番のメリットは、女性の体を「自分の外側にあるもの」として享受できることだ。  指一本触れるだけで極上の幸せを味わえる美しい女体も、目覚めてから寝るまで常に自分の意識のそばにあり、毎晩入浴時に全身を見て触る女性自身としては、なんのありがたみも感じられないことだろう。  男の人生は常に乾きと隣り合わせで、けれど乾いているからこそ潤うことができるのであって、そういう意味で僕はこの体に生まれた自分の運命が嫌いじゃない。  狙った女の子の服の中にたどり着いた時、神秘的なまでの至福を享けられるのだから。 「んっ」  ベッドの上の菜乃花(なのか)ちゃんが小さく息を漏らす。僕は彼女の上半身に右手を這わせ、部屋着のボタンに手をかけた。 「ダメ……」  甘い声に抵抗の意思は皆無。建前上僕の手を払うそぶりを見せるも、その手にほとんど力は込められていない。答えは、いつも言葉の外にある。  胸元のボタンを外せば、現れたのは淡い水色のブラジャー。薄っぺらいこの布が、彼女の秘密を守る最後の社会性だ。  くねりくねりと動く美しい体躯にこの上ない興奮を覚えつつ、下着越しに彼女の膨らみに触れた、その時。  玄関から、終わりの始まる音が聞こえた。
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