隣の席の某S氏

1/1
前へ
/1ページ
次へ
私の隣の席には少し変わったやつがいる。 「…S氏」 「ん?」 私は彼の背中をとんとんと叩いた。 「ん?じゃねぇよ…起きろ…w」 前の方の席なのに堂々とうつ伏せになる彼。 タレ目でくせっ毛の髪の毛。サッカー部のくせに運動神経が悪いやつである。 「あーわかった……」 目を擦って起き上がる。 シャーペンを持ってノートに書き写す…と思った のに 「いやいやいやwまた寝るなって」 気がついたら机にうつ伏せになっている彼。 うとうとしながらそのまま倒れ込む。 起こしても起こしてもこれだ。 佐々木隼人、それが彼の本名であった。 「えーすーしーーー起きろ」 佐々木の左後ろ…私の後ろにいる子が佐々木の椅子を蹴る。 「ちょいちょいw赤村!」 赤村ゆう、身長は低いくせにサッカー部でキーパーをしている。 運動神経が良すぎてなんでもできるやつだ。 彼とは小学校の頃からよくつるんでいて、まぁまぁ仲がいい。 「ゆう…椅子蹴んなよ……」 頭をかきながらも佐々木が起きる。 こちらを睨んでいた先生が黒板の方を向いて授業を進めだす。 私は小さくため息をつきながらノートを書く。 「なお…今度寝てたらこいつぶっ叩いていいぞ……」 「りょーかい」 なお、と呼ばれた私は武井奈央。 どこからどう見ても常識人である。私と関わる人がほぼ変人なこと以外は。 「武井さん…絶対やめろよ?」 佐々木は少し不貞腐れたように唇を尖らせた。 眠いもんはしょうがない、という独り言を残しながら。 「いや、普通に殴るわグーで」 拳を少しだけ上に上げる。 「奈央wそれはやりすぎだwこええよ」 赤村が今度は私の椅子を蹴る。 「いや…ゆうのほうがこええわ」 佐々木はこちらを見て苦笑する。 少し高めの中性的な声でのツッコミはその言葉に面白みを足した。 「クックックッ……」 思わず腹筋が揺れる。 「武井さん笑いすぎw」 鋭くツッコミを入れる程度には眠気が覚めたようだ。 「うるせぇ…くくっ…絶妙に面白いのが悪いww」 佐々木は笑いながら前を向いた。 しばらく真面目に授業受けてから、佐々木の足と私の足が軽く触れる。 「あ、ごめ…」 謝ろうとして佐々木の方を見る。彼は少し真剣な目をして言った。 「俺、ずっとこの席が良い」 その言葉がえらく真剣であったので私は目をそらした。 そしてすぐ右手でグッドサインを作り笑う。 「私もこの席がいい〜」 するとそっちから先に言ったもののはずなのに彼は戸惑う。 目をそらし顔を黒板に向けた。そして頬杖を付きながらつぶやく。 「お…おう……」 ななななんなんだっ!?え…何こいつ。 絶妙に……かわいいぞ…? こうしてS氏こと佐々木とのちょっと不思議な学校生活がスタートしたのであった。 続く(?)
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加