気紛れに優しく

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(17?)  ネイルの先にあるクリアなスマホケースには『17』という数字が挟み込まれていた。スポーツ選手の背番号だろうか。 (17って誰だろ? 野球? サッカー?)  コーヒーを呷りながら、自分もスマホを取り出して『背番号17』と検索する。様々なスポーツ選手が並ぶ中、トップに並んだのは『大谷翔平』の文字だった。 (きっとこれだな)  スポーツに明るくない俺でも知っている名前。自分よりも年下で——若くして世界で戦っている男。年俸は幾らだったか。 (運動神経も良くて、金も持ってて、か)  思わずチッと舌打ちが漏れた。平凡な自分を一握りの天才と比べたって仕様が無いのは分かっているが、それでも同じ男として悔しさが湧き上がる。俺だってそういう家に生まれていれば、整った環境があれば、海外経験のあるバイリンガルだったら、身長があと十センチ高ければ、モデル並のイケメンだったら……。
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