気紛れに優しく

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「近場で済ませようとすんなよ」 「ちげぇよ。近場から責めるんだよ。手を広げすぎて失敗したらショックがデカいだろ」  準備に時間も掛かるんだし、失敗したら戻しが大変だし、スモールスタートっつー奴だよと、二宮はもっともらしく嘯いてスマホを取り出した。 「そうだけどな。何もここでしなくても」 「口じゃ無くて手を動かせぇ、ってな。リーダーの口癖じゃねぇか」 「そうだけどさ」  俺は自販機の前で缶コーヒーのプルタブを引いた。二宮も同じコーヒーのボタン押し、スマホをかざし決済している。  ここはSメディア内の休憩コーナーである。午後イチのチームブレストで二宮が提案してきたプロジェクトは、このタチバナビルに入居している企業に声を掛け、異業種交流会を行おうというものだった。同じビルで働く者同士、顔を知って助け合って仕事をしましょうということらしい。マンションの自治会かっつーの。
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