2

5/7
前へ
/210ページ
次へ
ケホっ。 朝から咳が止まらず藍は薬を飲むため自席を立ち給湯室に向かう。 季節の変わり目だから気をつけてたのに。 今日は大事な接待あるから気合い入れないと。 手持ちの薬を服用し水で流し込む。 藍は喉が弱く幼い頃は季節の変わり目になるとよく熱を出す体質だった。 社会人になってから気をつけてたのに、このところ業務が立て込んでいた事もあり自己管理が出来ていなかったのだ。 夕方までには良くなるといいけど。 出来るだけ温かいものを飲もうとポットに手をかけようとした瞬間「美輪さん」と声が響いた。 「瀬奈。どうした?あ、珈琲?」藍は瀬奈に場所を譲ろうと体を動かす。 会社には無料で自分で入れる珈琲メーカーがありセットしてすぐ出来るため皆がよく利用するのだ。 「美輪さん。体調大丈夫ですか?」瀬奈は給湯室の入り口に立ち藍の様子を見ている。 「大丈夫。ちょっと咳が出るだけだから。」 部下に心配されるなんて本当にダメだな。そんな気持ちを悟られぬようにニコっと微笑んだ。 そんな藍の側にススっと来ると、彼は手のひらに何かを握らせた。 「飴玉?」 「のど飴です。気休めですが舐めて下さい。」そう瀬奈は言うと部屋を出ていく。 手のひらに沢山の飴玉の袋。 藍はその一つを口に入れコロッと転がす。 あ、レモン味。 いつだったか、女子社員がお菓子を配っていた事がありレモン味と珈琲味どちらがいいですか?と聞かれレモンが好きなんだよね。と話した記憶を思い出す。 横にいた瀬奈はあの時の会話を覚えていたのだろうか。 瀬奈の優しさに癒され藍は気合いを入れ直す。 今日は失敗できない。 部長である自分がしっかりしなくてはと気持ちを切り替えた。
/210ページ

最初のコメントを投稿しよう!

984人が本棚に入れています
本棚に追加