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嫌だ。 気持ち悪い。 恐怖からか気持ち悪さからか体が震えて力が入らない。それでも体を離そうと懸命に動くが、逆に相手側が近づき顔を近づけてくる。 ガシっ。 藍の体は突然相手からベリっと離され、大きな背中に守られる。 瀬奈 藍は突如現れた瀬奈の広い背中を見上げホッと安心し思わず涙が出そうになる。 「やめてもらっていいですか?」普段の瀬奈からはおよそ想像も出来ないほど低く怒りを含んだ声に藍は驚く。 「君、失礼じゃないか!私は美輪君と2人で話がしたいだけだよ。」相手が瀬奈に突っかかり捲し立てている。 「話はここでする必要ないですよね。美輪は今日体調不良なんでこのまま帰らせます。では、失礼します。」瀬奈は相手を置き去りにして、そのまま藍を連れて店を出る。 タクシーに乗せられ藍はハッと意識を戻す。 「瀬奈!俺も戻るから!」藍は慌ててタクシーから降りようとしたが、瀬奈の逞しい腕に再び捉えられ再度タクシーに乗せられシートベルトまでつけられた。 「美輪さん、ダメです。今日は帰って下さい。」 「でも!」 「さっきの親父は俺が何とかしますから。お願いだから今日は帰って下さい。いいですね?」 瀬奈はそう言うと体を離した。 タクシーの扉が閉り車はスムーズに走り出す。 藍は後ろを振り返り、見送る瀬奈の姿を目で追った。彼はずっと見えなくなるまでその場に居続けた。 藍はふと体の震えが止まっているのに気づく。 瀬奈の背中は大きい。 そんな事を思いながら体を車に預ける。 顔が熱いのは熱のせいなのか、今しがたの出来事のせいなのか考える余地もなく藍は目を閉じた。
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