犬系彼女は甘え上手

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 すっかり目が覚めた俺たちは、そのままスーパーに立ち寄った。  いつも利用しているこの大きなスーパーマーケットは、人間もケモノ族も関係なく利用できる魅惑の場所だ。  中でも、肉や魚は豊富に取り揃えてある。 「見て見て、陽太! お肉がこんなに!」  愛美はお肉コーナーに一目散に駆けていくと、尻尾をフリフリしながらテンションMaxで俺を呼ぶ。 「落ち着いて、愛美。勢いあまってここで食べちゃダメだよ」  カゴを持って行く俺に、またも口を尖らせる彼女。 「だーかーらー! 私、そんなに食い意地はってないってば!」  言いながらも、お肉パックをちょいちょい掴み取ろうと腕を伸ばしては引っ込め、伸ばしては引っ込めを繰り返していた。鼻息まで荒い。  ほんと、説得力に欠けている。 「うーん、どれもおいしそう!」 「そうだね。愛美、どのお肉がいい?」  尋ねる俺を無視して、彼女はキョロキョロと品定めに余念がなかった。 「んー、これも新鮮でおいしそうだし、こっちも脂がのってておいしそうだし……。ああー、迷っちゃうー!」  両手をバタつかせてあっちに行ったり、こっちに行ったり。  本当にせわしない。 「じゃあ、この豚バラにしようか?」  俺は手前にあった豚バラパックをひとつ手に取った。 「豚バラー!」  すかさず駆け寄ってきて俺の手から豚バラパックをかすめとる彼女。  泥棒猫とはよく言ったものだ。  彼女は犬だけど。 「愛美は豚バラにする? じゃあ、俺はこっちの牛ロースにしようかな」 「ええー! じゃあ私も牛ロースがいい!」 「あ、牛ロースがいい? なら俺は豚バラにしようかな」 「豚バラー!」  ……どっちだよ。 「愛美が豚バラにするなら俺は牛ロースにするけど?」 「やだ。陽太と同じものがいい」  そう言って、ガシッと抱きついてくる愛美。  まるで大きな子どもだ。   「はいはい、じゃあ二人で半分こにしようか」 「うん!」  愛美は嬉しそうに笑った。
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