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駐車場から病院の玄関へ歩く瞬。
病院の玄関で綾菜が立ちすくんでいた。
見つめ合う二人。
「ごめんなさい…。あの人が見えて、何か不安で…。あの人との話、聞いてしまいました。…ごめんなさい…」
そう言って綾菜は泣き出してしまった。
病院の玄関という事もあって、二人の様子を気にするすれ違う人達から避けるように、人気の無い非常階段のドアの前に、瞬は綾菜を連れて行った。
「俺こそ、勝手にごめん。余計困らせたかな?でも、もう傷付いて欲しくなくてさ。大樹にも綾菜さんにも…」
「…大樹、聞いてたんですね…、私とあの人との会話を…。…知らなかった…。私が大樹を傷つけちゃってた…。…私が…」
泣きながら綾菜が言葉を返すと、
「大樹は、大丈夫だよ。綾菜さんが傷つく事の方が悲しかったんじゃないかな…。だから、もう、悲しまないで…」
綾菜がこれ以上傷つかないように…。
瞬は、精一杯の嘘にならない程度の言葉で綾菜に伝えた。
「大樹…。ごめん…、大樹…」
まだ涙が止まらない綾菜を、瞬は抱きしめた。
「過去は変えれないからさ、これから大樹を一緒に幸せにしていこうよ。たくさんさ」
綾菜が顔を上げて瞬の顔を見つめた。
泣きはらした綾菜の顔を優しく見つめる瞬。
「幸せになろうな」
瞬のその言葉に、綾菜は泣きながら頷いた。
しばらくして、綾菜が少し落ち着いたのを見て、
「さて、大樹の所行くか」
瞬がそう言って笑うと、
「大変!受付行かなきゃいけないんだった…」
と、慌てた綾菜に、
「じゃあ、大樹の所で待ってるよ」
そう言って瞬は、軽く綾菜の頭を撫でて、非常階段を大樹の居る2階へと上っていった。
瞬のその後ろ姿を少しだけ見て、綾菜は玄関近くの受付に向かった。
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