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大樹の想い
「遅いなぁ…」
退院の準備を終えた大樹が、ベッドに腰を下ろして、部屋のドアをじっと見て呟いていた。
「瞬くん、来るって言ったもん…。約束…、したもん…」
不安で言葉が溢れた。
しばらくすると…
「大樹!来たぞ!」
瞬の笑顔に安心した大樹は、瞬に飛びついた。
「もう!遅い!待ってたんだからね!」
「悪い、悪い!」
瞬がぎゅっと包み込むように抱きしめると、大樹は力を抜いて、瞬に体を委ねた。
大樹は、そっと瞬から離れようとしながら、
「瞬くん、昨日は電話しちゃってごめんね。でも、来てくれて嬉しい」
そんな風に、少し恥ずかしそうに嬉しさを言葉にする大樹の頭を、瞬はそっと撫でながら、
「大樹が甘えてくれるのは、俺も嬉しいよ」
そう言って笑うと、大樹もホッとしたような顔で微笑んだ。
「今日は、明子ばあばの所に行くんだよな。俺も一緒に行ってもいいか?」
瞬のその言葉に、大樹は喜び、
「やったぁ!一緒に行こうね」
そう言って、また瞬に飛びついた。
「…あぁ、一緒に、な」
言葉を噛みしめるように、抱きしめ返しながら大樹に伝える瞬。
大樹は、瞬の腕の中が一番安心すると心の中で思っていた。
ずっと、ずっとこうしていてほしいな…。
大樹は、伝えたいけれど伝えていいのか分からない気持ちを抱えながら、瞬に抱き締められていた。
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