未知の道ゆく

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未知の道ゆく

「コンニャロなマーゴ、きみのその幸運と幸せは、飼い主さんと再会できたところで完璧になるのか。おおいいさ、完璧になっちゃえよ! おれもなんとかそうしてあげたいんだ。人間たるおれには、少々の知恵がある。これはやっぱりSNSの力を使うのが早いな。だったらまず、そうだな。迷い犬としてアップする用の写真を撮るべきか。ああ。ここで引っくりコケたのも、いいついでじゃないか。そいつはまだ日が明るい、今のうちに撮ってしまおう。 はーい、こっち向いてー。いや近すぎ、近すぎねー。はーい……。いいか、これはただの一匹のなんとかレトリバーの写真にしてはいけない。このマーゴのマーゴ性ってやつを、 “マーギッシュ”なるものを、ごわっとふかく捉え切った、これぞマーゴ、どう見てもマーゴ、もうマーゴよりもマーゴらしいっていうのを撮らなくっちゃ。ようーし、やったるぜ! まかせろよ……。 ああ、そういえばマーゴ、首輪をしてたじゃないか! 長い毛でずっと隠れてるけど。なんだ、いっけね。迷い犬ですとSNSに上げるなら、まずこれを大きく写さないでどうするって話だ。ハハハハ! ほらじっとして。ご立派なロングヘアをかき上げるぞ。 ……ん? この首輪、マジックでなにか書いてある。なんだ? 汚れてて読みにくい。電話番号かな? だったらそもそもいちばん世話がないが……いや文字だ。ひらがなだな。えーと、『ひ』、『ろ』、『っ』……? これは『て』? 『ひろってください』……? おい待て、なんだと?!」
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