リュックを背負って

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「どこもかしこも秋、秋、秋。ふしぎだなあ、見つめれば見つめるほど、もっと秋になる。秋ってなんだ? もしもし、あまりに壮麗な、でも落ち着き払っているあなた。その巨きなすずしいからだにはめこまれた心臓を、血のめぐりを、もっともっとよく見せておくれ! おお秋ってそうか、おれを取り巻いて音もなく燃え盛るほのお。巨大な香り高いほのおだ。おれはよろこんで、この腹の内側までスモークサーモン。だけどそもそも短すぎる、もう終わりにさしかかった、北の大地の秋よ。ああそしてこの、今日という一日よ――おれの貴重な休日よ! 自由よ! さみしいなあ……。そういえば中学で好きだったアキコちゃんは春に生まれました」
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