大空を舞うおれさまのアリア

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大空を舞うおれさまのアリア

「……マーゴ、歩きながら聞いてくれ。これはおれの独り言だけど、ひょっとしたらきみが自分と関係あると思う部分もあるかもしれない。ようするにマーゴ、なんというかきみは、おれに大きな期待を寄せ過ぎてるようにも見えるからだ。むろん、へんに期待をさせちゃったおれも悪いんだけど……。 オホン! で、独り言だが、このおれという奴は、非常に孤独な男である……! 非常に孤独で、また非常に非情なのだよ。そして孤独をふかく愛している! 独りぼっちが好き。大好きだ。なぜなら孤独こそ自由の母体だからだ。実はほんとうに愛してるのは自由の方だけれど、そこに至る小道を護ってくれてるありがたい番人にも、すなわち孤独にも、たっぷりと感謝と愛情を捧げるのは、まったく当然のことじゃないか。 はたしておれは独身である。まわりの多くの人間が不可解な顔をすることにそうである。つまり芥川龍之介似の長身瘦躯で、日々心を殺した代償に決して悪くない稼ぎのあるおれにして独身なのである。おれはずっと若い頃から世の男女が、かくも貴重な孤独を、自由を、互いに侵し合う習慣が理解できなかった。だからおれは、たとえ大好きな若い頃のオードリー・ヘップバーンに結婚を申し込まれたって、迷わずこう答える。『ンア? すいません……』。自由に囚われ、おれ自身に呪われたおれさまは、一生だれとも生活を共にすることができない男なのである。そうです。だれともとな……!」
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