大空を舞うおれさまのアリア

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「おれはおれの自由を、心と体の動きの自由を、だれにも、1ミクロンだって割譲したくないんだ。それでなくたって社会人になって以来、自分のために使える時間なんて年々減る一方。いやもうすでに、限りなくゼロに近くなっている! たとえ許された最善の選択、独身であってもだ! ああ、次にこうやって大好きな山歩きができるのだって、何か月後のことになるやら。だからおれは断然、ケチになるんだ。ならざるを得ないんだ。自分を守って、生きてゆくためにな!! だからおれは、おれの愛情を強く駆り立てる者ほど、または駆り立てる可能性のある者ほど、つまりはこの心への侵略者としての力が強い者ほど、事前にきびしく立ち入り禁止としてやる! あっはっは! ふうーっ、こんなおれの生活には、そうだなあ、子猫一匹だって入り込む余地がないだろうなあ。うん。ないな! ないない。……聞いてたかい? マーゴ。おれの独り言。 まあなんにせよさ、駐車場に着くまでに、きみの飼い主がひょっこり現れてくれたら、すべてはすっきり解決、ハッピーエンドなんだよ。そうなるに限る。飼い主だってそりゃ心配してるし、死ぬほど悲しんでるだろう。そして必死に探し回ってるだろうな。こんなにかわいい家族が行方不明になってしまったら……、腹を空かしてると想像したら……。でも、そううまくいくだろうか? ううーん、そもそもマーゴは迷い犬になってそうとう長いだろう。これほどの痩せ方からして……。その長いあいだにも飼い主に出会えなかったとすると、やっぱり、ううーん、うーん……うわっ! あ痛ッ!」
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