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「それで結局、お前は何がしたいんだ」
「わたくしはカミサマとひとつ賭けをすることにしたのですわ。お題は単純。人類が愚かであることをわたくしが示せればわたくしの勝ち」
「人類は十分愚かだと思うけど」
「わたくしもそう思いますわ。でも、そこは進化の余地が残されている、とカミサマは考えているようですわね」
「進化の余地……」
それはGIFTのことを指しているのだろうか。人類の脳がより進化すれば、人類はカミサマの望むような存在になれるのだろうか。
「これはいわばカミサマとわたくしとのゲームですわ。お前達、人間はその駒でしかありませんわ」
酷い言い草だ。
「あのなあ、人間だって銃やミサイルを持っている。お前達の訳の分からない力になんて屈しないぞ」
「あんな鉄の塊、わたくし達の魔法に比べたらただの玩具ですわ」
マオウは鼻で笑う。
「本気で言ってんのか」
「手始めにこの国の原発に向けて沖縄に駐屯している米軍の全兵器を仕向けましょうか。次いで核兵器とやらを世界中に発射する。自らの科学力に溺れるがいいですわ」
「……」
マオウはくすくすと笑う。あどけなさの残る笑いだ。だが、拓眞は口を噤んだ。この女は本気だ。
「カミサマとのゲームの話に戻しましょう。わたくしはとある魔法アイテムをとある男に授けましたわ」
「魔法アイテム……」
「さっき言ったマンドラゴラの根、ですわ」
呪いのアイテム、マンドラゴラの根。強力な媚薬だが、同時に使った相手を病気にする。
「まさか……」
この状況は拓眞の身の回りに起きている事件と酷似している。陽菜はALSを患い、それと同時に尚央に惚れている。陽菜は以前、尚央のことはタイプではないと言っていた。なのに、今は尚央と付き合っているという。
「お前がマンドラゴラの根を渡したのって、橘か!」
マオウの話が事実ならば、今の状況に符合する。
「ご明察ですわ。わたくしは橘尚央のシャペロンでしたわ。わたくしは彼にマンドラゴラの根を渡し、彼はそれを使って姫を落とした。それでわたくしは人間の愚かさをカミサマに見せつけてやるはずだった。愛する者を死なせてでも手に入れる。矛盾した歪んだ愛ですわ。……なのに、彼はあろうことかマンドラゴラの根の呪いを解くアイテムを探し出したんですわ」
そのアイテムこそがクルクミン。つまり、陽菜の病はALSではなく、マンドラゴラの根の呪いだったということだろう。
「悔しいですわ! 有り得ないですわ! まさか、解毒不可能と言われたあの呪いを解く薬がこの世界にあるなんて予想外ですわ。これではカミサマとの賭けに勝ったとは言えないですわ」
拓眞は絶句した。これで、尚央がやたらと陽菜の病気を治すことに積極的だったのも納得だ。彼は、マンドラゴラの根の呪いの効果を打ち消し、媚薬効果だけを手に入れて、陽菜を手に入れる算段だったのだ。
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