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翌日から、夫は犬を研究しはじめた。犬種ごとの性格を調べ、能力を比較検討してデータを集める。徹底的に、徹底的に……
ある日、夫はパソコンの前から立ち上がり、
「よし、完成だ!!」
叫ぶと家を出ていった。
「ああどうしよう。帰ってきたら、きっとあの人は犬だわ……」
私は考える。
犬になった夫を愛せるか。
私は犬好きだ。
私は夫が好きだ。
結論:私は犬になった夫も愛せる……。
「だいじょうぶ。彼が詩人でも画家でも、女性でも愛せた。犬でも愛せるわ」
ばーん!とドアが開いた。
私はにっこり笑って振り返る。
「おかえりなさい」
「「ただいま!! バウバウバウ」」
そこには、かわいい子犬を抱えた夫がいた。
「徹底的に研究したよ! きみの性格と犬種の性格をマッチングしてみたんだ。3万回のシミュレーションの結果、きみにぴったりの犬は――」
夫は白黒ぶちの子犬をかかげた。
「ジャーマンシェバードとパピヨンとシーズーとボーダーコリーの血が入った犬だ!」
「それってつまり、雑種ってこと?」
「バカを言うな! 雑種じゃない、ハイブリッドだ!」
夫は子犬に顔をすりつけながら、大声で笑った。
「やっとわかったんだ。世界中の誰に褒められても満足できない。きみに、褒めてほしいんだって」
詩人で画家で、完璧な女装ができるハイブリッドな私の夫が、そこにいた。
一周まわって、タダの犬バカ。でも世界一私を愛してくれている。
なんてステキなハイブリッド。
「ありがとう。こんなにステキなハイブリッドはないわ。ありがとう」
ふたり(正確には夫と犬)を一気に抱きしめた。
このあたたかさは、わたしだけのもの。
【了】
※※最後までお読みいただき、ありがとうございました♡
このお話は、毎日公開中の140字ストーリーから展開したものです。
よろしければ、元ネタもどうぞ!
『140字、約束のない恋でもしようか』(20秒で読める超短編集です)
https://estar.jp/novels/25936112
第470話「承認欲求、ステップあーっぷ!」
https://estar.jp/novels/25936112/viewer?page=470
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