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「え? どういうこと?」
「どういうことも何も、夕飯の準備は優子の仕事だろ。もう俺、腹ペコだぜ」
私の稼ぎに甘んじて、家でダラダラ過ごすだけの、いつもの夫だった。
普通に生きているし、死んだ痕跡も全くない。
ならば……。
私が彼を刺し殺したこと。あれは、悪い夢だったのだろうか?
「うん。わかった……」
納得はいかないが、そう理解して現状を受け入れることにして、
「待たせてごめんね。急いで支度するから、もうちょっと待っててね!」
わざとらしいほど明るく、彼に声をかける。
口では「待たせてごめんね」だったが、心の中では「夢の中とはいえ、殺しちゃってごめんね」という気持ちだ。
謝罪の意味も込めて、今日は腕によりをかけて御馳走を用意しよう。私はそう思った。
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