私は夫を殺してしまった

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     夕飯を食べ終わる頃には、私の胸の内の動揺も、すっかり収まっていた。  おそらく仕事が忙し過ぎて、帰りの電車の中で居眠りして、夢でも見たに違いない。電車から降りた後も寝起きみたいにボーッとしてしまい、夢と現実の区別がつかなかったのだろう。それで「夫を殺してしまった」と思い込んで、近所をウロウロしていたのだ。  お風呂に()かってリラックスすると、そんな解釈が頭に浮かんでくる。 「なんだか馬鹿みたい。完全に笑い話だわ」  独り言が浴室に響く。  いっそのこと夫にも話して、二人で笑い飛ばしたいくらいだった。  しかし、いくら夢とはいえ「あなたを殺しちゃった」は言わない方がいいだろう。それよりも、一応は罪悪感もあるのだから、今夜はいつも以上に優しく接しよう。たまには少し豪華な晩酌でも用意しようかな?  そう考えて、お風呂を出たのだが……。    
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