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薄っすらと淡い青色の苔の生えた岩間には、丁度、座れるくらいに削られた岩があった。足の低いテーブルにもなりそうな切り立った岩もある。そこへ音星が背中から布でできた袋を降ろして、その中から大き目のハンカチで包まれたおにぎりを置いた。
俺は必死だったから気付かなかったけれど、どうやら、音星は今まで布でできた袋を背に抱えていたようだ。そういえば、音星は提灯を手に持っていない。今は布の袋の中に仕舞っているんだな。
俺のリュックサックの中には、菓子パンもないので、有難く頂くことにした。
「ありがとな」
「ええ」
「……おにぎりの中身は?」
「梅干ししかないですよ」
しばらく、俺たちは等活地獄で飯を食べていた。獄卒の休憩場だけあって、辺りは静かだった。
ふと、俺は音星が何故、地獄にいるのかと疑問に思った。
「あの。音星はどうして……?」
「地獄へいるのか……? ですか? 私、この通り巫女の格好をして旅をしていますが、正確には巫女じゃないんですよ」
「へ?」
「私、東北地方の出なんです。あと、どちらかというと巫女ではなくてイタコ寄りなんですよ。死者の口寄せをしていますので」
「ああ、そうなんだ。あっ、そっか! 音星は口寄せ巫女っていうイタコの系統に属する巫女なんだな」
「ええ、ええ! そうなんです!」
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