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等活地獄を鬼(獄卒)たちの目を盗みながら散々走り回ること数時間。
結局、俺は妹を見つけられなかったんだ。
やっぱり、ここにはいないんだな……。
そして、その後に音星がどうやって、地獄へやって来れたのがわかった。
かなり疲れたので、音星がいる岩間に戻るってくると、俺の食べ掛けのおにぎりがそのまま置いてあった。
音星は依然として目を瞑って突っ立っている。
「あの。火端さんですよね。そこにいるのは?」
「ああ……」
「妹さんは……おりましたか?」
「いや、いない。やっぱりもっと下の方だ」
「それでは、私たちも限界ですし、おにぎりもなくなりましたし、それにもう現世は夜遅いと思うので……」
「……あ、ああ」
「ここいらで、八天街のお宿へと戻りたいのですが……」
「……あ、ああ。って、え?……ええ??」
「火端さん? お宿は? どこかに泊まるところはないのですか?」
「うん。ないんだ」
「あ、そうですか。それでは、私の今寝泊まりしている。お宿をご案内いたしますね」
俺は音星の言葉に終始、呆気にとられていた。
今更ながら現世に戻れるのか?
どうやって?
「それでは、お後がよろしいようで」
そういうと、目を瞑ったまま音星は、肩から降ろした布袋から古い手鏡を取り出した。
そして、俺の方へ手鏡を向け。
「火端さん? そちらにおられますか? 鏡……写っています?」
「ああ……今、その鏡に俺の姿が写っているよ」
「そうですか。そのままじっとしていてくださいね」
音星の持つ手鏡が光りだした。
「では……」
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