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しばらく俺は、言われた通りに音星の持つ手鏡をじっと見つめていた。
すると、手鏡の光は眩しさを増した。
「そのまま……そのまま……手鏡を見ていてください」
「ああ」
…………
突然、車のクラクションが俺の耳に入った。
辺りがすごく明るくなって、雑踏が少しずつ聞こえて来た。
俺はびっくりして、後ろを振り向くと……?
「うん?」
目の前には、バスで来た時に見た八天街のロータリーが広がっていた。
「え? え? な??」
「どうです?」
音星の声の方へ首を向けると、音星は布袋を背負ってロータリーから大通りへと横断歩道をスタスタと歩いて行ってしまった。
「さあ、火端さん。お宿はこっちですよ」
「あ……ああ。さすがに驚いたよ」
なるほど。
こうやって、音星は地獄へ行き来していたんだ。
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