弥生?

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 俺たちは煮え湯から逃げるために、また全速力で走ることになった。それも、今度は元来たところを通って、東へ向かうんだ。一度、走ったところだから、火のついた釜土の位置や、それに入っている人型の魂たちの位置までもが、俺には感覚的によくわかっていた。  きっと、音星たちもだろう。   大急ぎで駆け抜ける間中。ずっと、俺の後ろにはシロがいた。シロもさすがに猫だけあって足が速いな。 「火端さん! もっと速く!」 「ああ! わかった!」  音星って、こんなに足が速かったのか?    俺とシロの後ろ擦れ擦れには、まるで追いかけるように、空から大量の煮え湯が降り注いでいく。  俺たちが走り出した後で、ジュウ。ジュウっと、真っ赤な地面が焦げる音がしてきた。 「ハアッ、ハアッ!」  俺は思いっきり地面を蹴って走った。   「キャッ!」  目の前を走っていた音星が急にバタンと倒れた。何かに躓いたんだ。 「音星! 大丈夫か?!」  俺が駆け寄ると、音星の右足を人型の魂が掴んでいた。           
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