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「ほんとごめん!! 急いでるんだ!」
俺は人型の魂の手を音星の右足から力任せに外すと、目を瞑っている音星を立たせた。
「さ、早く行こう!」
「はい!」
俺たちは後ろで巻かれる煮え湯から逃げるために、走った。
火のついてない釜土が目に入った。
そこまで、走るとあることに気がついた。
「や、弥生??」
今まで音星の前方を走っていた。弥生の半透明な姿が見えなくなっていた。
「どこへ行ったんだろう? おい、弥生!!」
「弥生さーん!!」
俺と音星は弥生を呼んだが、返事すらもない。弥生を呼ぶ声は辺りの人型の魂の悲鳴によって、掻き消えてしまうのだろうか?
そうこうしているうちに、降り注ぐ煮え湯がすぐそこまで来ていた。滝のように降り注ぐ煮え湯が、俺たちの真後ろへ迫っていた。
「仕方ありません!! 火端さん!!」
「え?!」
音星は俺に手鏡を向ける。
「えい!」
「わっ! ちょっ! 待っ?!」
手鏡からの激しい光が俺の目を襲う。
俺は眩しさで目を瞑った。
辺りの人型の魂の悲鳴が聞こえてこなくなった。
変わりに、車のクラクションの音がする。
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