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「おじさん! ありがと!」
俺は大急ぎで、二階へ上がってクーラーバッグを持ち出すと、そのまま一階の廊下で待っている音星のところまで走った。
だが、途中で霧木さんにぶつかってしまった。
「おっと! もう、廊下は走らない。いいわね」
「はい。すいませんでした!」
何故か気だるげな印象の霧木さんが、一瞬だけ学校の先生のように思えた。
音星と一緒に玄関まで行くと、音星は肩に背負っている布袋から手鏡を取り出した。
「火端さん。急ぎましょう。もうすでに地獄ではかなりの時間が経っています」
「あ、ああ。でも、塩分とジュースやアイスとかは?」
「大丈夫ですよ。私がおばさんに頼んで買ってもらったんです」
「ありがとな!」
「弥生さんもですが、シロも心配です。急いで叫喚地獄へ行きますよ」
音星は手鏡を俺の方へ向けた。
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