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ピタッ。ピタンッと、水滴の音がたまにするのと、激しい風の音以外はしない洞窟の中で、俺は今日の夕食をとっていないことを思い出す。
昼から何も食ってなかった。
途端に、グゥ―と腹の虫が鳴った。
「地獄巡りバスツアーの後に、すっ飛んで来たからなあ……腹減った……地獄に食べ物なんてあるわけないぞ」
俺はリュックサックの中にある最後の菓子パンを、昼間にバスの中で食べてしまったことを悔やんだ。
「うん? 何か聞こえる??」
暗い洞窟の奥は、相変わらず風の音が凄まじい。
けれど、人の足音が聞こえた。
だが、どう聞いても靴の足音じゃない。
まるで、素足で歩く音だった。
ヤバいかな?
戻って、元来た道を逃げるか?
そう思った時に、向こうから人を呼ぶ声のような……。
「あの。こんにちはー、こんにちはー、そこに誰かいるんですよね?」
いや、確かに人の声で誰かを呼んでいた。
ひょっとして、俺のことを?
だとしたら、御先祖様とかかな?
それも女の人の声だ。
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