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ひとつひとつを近くに寄せて光に透かしたり、軽く握っては手で触れた感覚を確認する。至極、楽しそうだった。
素晴らしい、美しい、とうわごとのように繰り返す。
「いいですね、これ」
最後に光に透かして、何分も眺めてから谷地さんが言った。手にしているのは、あの水入り水晶だった。
「水、かなり入ってますし、透明度も申し分ない。とてもきれいです」
「そうですよね、とても惹かれてしまって即決しました」
「わかります」
でも、と言った。「お守りのつもりで購入されたわけではないですよね」
「ええ、前々から欲しかったんです。太古のロマンに惹かれた、とでも言ったらいいのか」
「そうですか、ならば浄化などと言って太陽光にさらすようなことはなさらないと思いますが……それと、高温下で保管されるのは避けたほうがいいでしょうね」
「え……?」
「僕がわざわざお伝えするのもおこがましいのですが」
「ああ、そう……、そうか。そうですね」
思い至った。以前、本で読んだ覚えがある。
石の効能を信じて、お守りとして身につけるまえに浄化と称して塩に埋めたり水に浸けたり、太陽や月の光に当てたりする。しかし石によって禁止の行為がある。
たとえば、オパール。石のなかに遊色効果という、虹のような色彩が揺らめく。この石は水分を含む宝石で長時間太陽光にさらすと変色したり、高温下で放置すると乾燥でヒビが入るらしい。かといって水に浸したままも、変色を招くのでやってはいけないとされている。
水分を内包するこの水晶も、つまりは類似があるのだろう。
「もしかして無くなるんですか」
ええ、と谷地さんはうなずいた。私に水入り水晶を返してくれながら、こう語った。
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