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カメオと言えば、有色と白色の二層を利用して人物や風景の彫刻を施した工芸品のことだ。多くは厚い貝の殻を使用する。瑪瑙や大理石のものはストーンカメオという。現代ではアクリルや金属を成形した、カメオ風のものも流通している。
「正確にはカメオは浮き彫りで、こいつは沈め彫りっぽく加工してるんでインタリオと呼んだほうがいいらしいですが」
「へえ……」
「運がよかったんですよ。あまりやりすぎると、ただのレリーフになっちゃいますからね。偶然、うまい位置に石英の筋が入ってたもんで、僕は少し手をいれてやっただけなんです」
しかし、これは──と谷地さんの説明を受けても、なおも見入る。同好の士とはいえ、自分とは方向性がまったく異なる。だが。
はじめて理解できた気がする。とても魅力的だ。
「まあ、それくらいにして、そろそろこちらで呑みませんか。酒がぬるくなりますよ」
谷地さんはおだやかな笑みを浮かべ、床を軽くたたいてうながした。まだ近くで見ていない石がいくつもある。後ろ髪を引かれる思いで部屋の中央へと目を移す。
とたんに空腹を思い出した。
「そういえば、沈さんはどんないいものを手に入れたんです?」
惣菜をつまみに、二本目の酒の缶を空けたときに谷地さんが話を振ってきた。
「え、ああ……ええと」
室内のコレクションを前に、気後れする。格上に感じるものばかりに囲まれて、持参の石はとても些末に思えて出しにくい。
「ぜひ見せてください」
谷地さんに身を乗り出されては、断るわけにもいかない。
カバンを引き寄せ、いそいそと中からひとつずつ取り出してテーブルの上に置く。手頃な価格の結晶がみっつ。最後に片手に収まるサイズの水晶。
「触ってもいいですか?」
きちんと断りを入れてくる。うなずくと、谷地さんは目を輝かせて両手を伸ばした。
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