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ふっ──……。
ふっ──……。
ハッ。
ハッ。
ふっ──……。
ふっ──……。
深夜、部屋で布団の中。
スマホを持つ私の手は震えていた。
呼吸は荒く、まるで犬みたいだった。
落ち着けとすぅーっと深呼吸して、呪いのアプリをダウンロードをした。
数秒後。ダウンロードが終わりアプリを開くと、デザインも何もない真っ黒な画面に白い文字が並んだ。
『呪いの狗神アプリをダウンロードしてくれてありがとう! 早速呪いのアカウントを作りましょう!』
スマホに浮かぶ文字と、画面下に狗神クンとか言うチープな黒い犬のドットキャラ。
このチープさが逆に本当に呪いがあるんじゃないかと思い。苦笑しながらスタート画面をタップすると、いきなり質問フォーマットになった。
『名前は?』
「MAYU」
『年齢、性別は?』
「10代。女」
『誰を呪いたい?※必ず記入』
「鮎川杏里」
名前を記入しただけで、胸に苦々しい思いが広がる。
『呪いたい理由を具体的に※必ず記入』
「好きだった先輩を取られた。私の方が先に好きになって鮎川に相談もしていたのに、夏休み後に鮎川が告白して先輩と付き合うと知った。鮎川は『相談をされているうちに私も気になったの。ごめんねっ』と、笑顔で言ってきた。ムカつく。それで納得なんか出来ない。だから呪ってやりたい。その他にも──」
少し顔が可愛いから調子に乗っているとか。頭が悪いくせにとか。記入欄フォームにびっしりと不満を記入する。
こんなの八つ当たりにしか過ぎないのは十分に分かっている。先輩が杏里を選んだという事実がいつまで経っても受け止め切れない。
私の方が杏里よりかずっとずっと先輩の事が好きなのに。
なのに、告白も何も出来なかった自分が情けない。
その憂さ晴らしだというのも分かっているけれども、この悔しさをなんとかしたくて。
こんなの所詮お遊びだと分かっていても、杏里の不幸を願わずにいられなかった。
そして、呪いたい理由の記入を終えると。
『相手にどんな呪い(不幸)を希望しますか?※必ず記入』
少し迷ってから。
「顔がグチャグチャになればいい」
この世から消えて欲しいけれど、嫌な目に合って欲しい。困ってる姿を見たい。
そうして全て書き込むと。
ドット絵でくす玉の割れる演出が入った。
『全ての記入は終わりました。新規呪いのアカウント登録完了です。MAYUさんのアカウントにプレゼントをお送りしました。それを使って実際に呪ってみましょう!』
そんなメッセージが流れて画面下の狗神クンが『これからよろしくワンッ』と、セリフを吐いた。
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