狗神アプリ

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ひゅっと、変な呼吸をしてしまった。 「わ、私。寝る前に消したから、寝ぼけていたんだ。うん、そうに違いない……」 そうじゃないと説明がつかないと思った。 恐る恐るアプリを開いて見ると。 『MAYUさんの呪いは成就されました。おめでとうございます。利用規約により一週間に一度、狗神クンにご褒美の贄をよろしくお願いします』 トップ画面にそんな文章が載っていた。 「ちょ、えっ。成就って、ほ、本当にっ!?」 動揺して呼吸が荒くなる。 「い、いや、違う。こんなの自動返信の定型文。だって、(課金)を要求しているしっ。所詮集金ゲームってやつでしょ」 声も大きくなる。 だってこのゲームの(課金)は最低でも三千円から。高い。大人だったらいざ知らず、高校生でバイトもしていない私は毎月のお小遣い五千円。それぐらいしかお金を手に入れる手段はない。 意味がわからないと思いながらじわりと感じた恐怖より。現実的な金銭を要求されて、苛立ちながらアプリの利用規約を今一度見た。 『狗神クンは性質上、贄を辞めてしまうと今まで成就した呪いが利用者に返ってきます。それを回避するには贄を捧げるしかありません。 それでも退会をご希望の方は当社は一切の責任を持ちません(呪詛返しで強制解約をされる方もご注意下さい。当社では呪詛返し対策も万全におこなっております)』 「は? これって……死ぬまで課金しろってこと? やめたら、私の顔が……」 その先は怖くて口に出せなかった。杏里の事故が偶然だとしても不気味過ぎる。 どうしようとぎゅっとスマホを掴む。 この不安から逃れるには一週間に一度最低でも三千円、月にすると一万二千円の大金を狗に喰わせ無ければならない。 そんなお金ある訳が無い。 今からバイトを始めったって給料が貰えるのは一ヶ月後。 (今、財布には三千円ほどしか残ってない……!) ふー、ふーっと深呼吸する。 「ま、まだ贄を要求されて一週間経ってない。まだ時間がある。一度落ち着こう。そうよ、こんなの偶然、詐欺に決まっている。他の利用者の声とか一度探してみよう……!」 ここまで来ると壁紙を元に戻そうとは思はなかった。アプリもそのままにしとこうかと思った。 再度、消してまた同じように設定されていると今度こそ呪いを信じるしか、他ないと思ってしまったからだった。
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