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「とりあえず、それを狗神クンに課金したらもう一週間は余裕が出来るはずっ」
藁にも縋る思いでアプリを開く。
プレゼントボックスを開いて呪いの牙を選ぶが。
『呪いの牙は一撃必殺アイテム! これで嫌いなアイツをやっつけろ!※これは狗神クンへの報酬にはなりません。餌の贄をご利用下さい』
その文章に目が点になる。
「ふ、ふざけたことを言ってんじゃないわよっ! もう呪いたい相手なんて居ないのっ! 私はこのアプリを終わらせたいの!!」
ぎりっとスマホを握る。
私の財力では要らないものを売り払ったとしても、一カ月ぐらいしか課金が続けられないだろう。
課金が出来なくなったら──私の顔も犬みたいになるかもしれない!
「そんなのは嫌だ。どうしたらいいの……」
こんなこと親に相談出来ない。
相談したところで、バカバカしいと課金なんかしなければいいと笑われるだけだろう。
でも、本当に呪いが返ってきたらどうするんだ。
思考はぐるぐると巡回して、はっとあの口コミのことを思い出した。
『不倫されて裏切られた仕返しが出来ました! 保険金がたっぷり貰えたので狗神クンにお布施しちゃいま〜す! 星5』
それは。
誰かに呪いを掛けてお金を稼いだ例。
私の手元には誰かを一撃必殺で呪える牙がある。
「……ちょっと、試すだけ。そう、呪いが本当か試したらいい……」
それで何も起こらなかったらアプリを……いや。スマホを壊して新しいスマホを買って貰おう。
もし、本物だったらその先はあまり想像したくない。
まずは真偽を確める。それがいい。
ふっと笑って私はマッチングアプリのサイトを開いた。
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