狗神アプリ

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六日目。 学校に行く振りをして私は昨日、早速会う約束を取り付けたオジサンとカラオケに来ていた。 普通に考えて中年のオジサンと十代の私が付き合うなんておかしい。 それなのにカラオケに来てるってことは。そう言う交渉をする為。お互いの顔合わせってことでカラオケに来たのだった。 ──もちろん、私はそんなこと毛頭考えていない。ただお金次第で次はカラオケじゃない場所もあると思わせなコトを言っただけ。 内心、心臓がバクバクして背中に冷たい汗を感じていた。こんなこと早く終わらせたい。 それなのにオジサンは無理をして、優里のドライフラワーなんか歌っていた。ただただ白ける。 オジサンが歌い終わり。一応、気のない拍手を送る。 「優里、歌えるんですね。凄いですね」 「いやぁ。これぐらい歌えないとね。それよりも、アンリちゃんは本当に女子高生なんだね? 大学生さんとかOLさんとかじゃないんだね?」 ──アンリ。 私の仮の名前。 「そうです。私、そんなに老けて見えますか。ほら、これが私の学生証です」 それは事前に私の名前を修正して、鮎川杏里と書き換えた学生証。それを見せつける。 薄暗いこの部屋だったら修正部分なんてわからないだろう。 「いや、そんな事ないよ。うん。アンリちゃん疑ってごめんね。ほら、女子高生だと交渉金額がそれなりにね?」 ぐふっと気持ち悪い笑い方をするオジサン。吐き気がする。近寄って来ないで欲しい。こんな大人なら呪いの牙を躊躇なく使えると思った。 「私はちゃんと女子高生って証明したんで、オジサンもちゃんと身分が証明出来るもの。免許証とか見せて。じゃないと無理」 「分かったよ。ほら、これが俺の身分証明だ」 意気揚々と自慢げにただの免許証を見せつけてきた。そこには「大橋大洋」と名前が明記されていた。 大橋大洋。覚えた。 あとは狗神アプリを開いて狗神クンにお願いするだけ。 「ふぅん。年は四十一なんだ」 「意外と若く見えるだろ? これでも体は鍛えていて」 オジサンは免許証を財布に戻した。その財布の中は紙幣が多く入っているのが分かった。私はそのお金が欲しいのだ。 何やらどうでもいい自慢が始まりそうだったので、スマホだけ持って「お手洗いに行く」と席を立った。部屋を出て素早く個室のトイレに入ってから呪いのアプリを起動させた。
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