脚のない犬は幸せ募る

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 三時間ほどが過ぎてから彼女と会う。彼女は友達に仔犬のことを頼み込んでいたので僕が待たされたんだ。 「まだ仔犬のことは諦めきれない?」 「う、ん。まだ頑張りたいんだ」 「でも、今日もちょっとでも良い返事なんてなかったでしょ?」  夕食も終わったので夜の会社街を歩きながらの会話。 「だけど、あの子のためだから」  彼女の姿は本当に美しい。真剣に仔犬を想っている姿は僕にはそう写っていた。 「そんなに真剣になれるんだ。苦労しても構わないの?」  僕は足を止める。彼女を真剣に見て話してた。 「私が苦労してあの子の幸せに繋がるんなら、構わない」  まるで天使みたいだ。彼女の悪い部分だって知っている。当然完璧な人じゃない。それなのに今の彼女は素晴らしい。 「なら、僕たちで飼おう。郊外なら犬の飼える家だって買える。貧乏暮らしにはなるけど、それでも良いなら結婚しよう」  それは彼女と先輩の思い付きを合わせた僕の考え。  彼女は驚いている。それはそうだろう。 「良いの? うれしい」  彼女は小さな声しか出なくなったみたいに話す。 「頑固者が居たからねー」 「しかし、一緒に住むことを願ったのに、結婚も付いてきた。これはホントに嬉しいな」  さっきの驚きはもう消えたみたいに彼女は飛び跳ねて喜んでた。 「冗談じゃなかったのか」  ちょっとした僕の呟き。でも今の僕は間違ってないと思ってる。彼女のことが好きだから。  数か月も過ぎたら郊外の小さな家で彼女は片脚のない仔犬と一緒に遊んでいる。とても素敵な風景。僕が望んだ。  仔犬を抱っこして彼女が僕に笑いかける。 「ありがとうね」  尊い笑顔を見て心が踊る。 「恐ろしい」  軽く言うのだけどそれは間違い。あの頑固さに勝てる人間なんていないだろうからそれに怖さが有る。こうなると誰が考えたのか解らないから。 おわり
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