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波瑠の「ハル」ってノルウェイ語で半分って意味があるんんだって
帆の「ハン」は日本語で半分って意味でしょ
だから、俺たちのペンション名は韓国語で一つって意味のハナにしよう
半分の私たちは2人でやっと1人ね
うん
俺たちの秘密の旗印だよ
2人のナイショ話を思い出しながら
ちょこんとベンチに座って
夫である帆が釣りをしているところを眺めて微笑む。
湖畔が見下ろせるここには
いつからあるのかわからないベンチが
一本の大木に守られているようにポツンと設置されている。
波瑠はこのベンチが好きだった。
と、突然、
早朝の清々しい空気を濁すような大声で
帆がこちらに向かって叫んだ。
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「おはようございます。朝から大変でしたね。」
長身でどこかとぼけているこの男は
近所に住む職業が刑事の石田という男である。
帆の釣竿に引きづられるように全容を現したのは
まだ新しい死体だった。
帆と石田は軽く挨拶を交わした。
「ちょっと食べられちゃってますね。」
「やめてくださいよ。今週末、花で予約とってるんですから。」
「石田さん、ヒメマス好きですもんね・・」
「・・・やめてくださいよ・・その余韻・・・」
2人はなんとも言えない顔でみつめ合った。
そう大きくもない帆と長身の石田が湖畔のシルエットになる。
「帆〜! お客さん〜!」
遠くで波瑠の声が2人を現実に引き戻した。
石田は帆の肩をポンポンと叩いて
行けの合図をした。
「後からお伺いに行きますんで。」
湖畔は砂地で辺りは高原
固いものは何もない場所だったが
湖から上がった死体には
生前に受けた頭蓋骨陥没の跡があった。
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