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「片思いじゃ無いってことは…?」
ふりむけば目の奥に涙が宿る椿が居た。
「俺は莉里が好きなんだ」
ついに俺は莉里の名前を呼んでいた。
「名前…呼んでくれたっ。ありがとう」
莉里はいつもより顔が赤く見えた。
俺も照れていた。
「でも…椿、」
俺は椿のことが気がかりだった。
「海司、俺は覚悟はできてた。今の望みは海司と莉里の幸せだ。実は俺、莉里にもう告白してたんだ。そしたら手紙で、『海司のことが好きなので、お断りします。でも、椿とは今まで通り友達でいたいです』って返事が来たんだ」
衝撃だった。まるでりんごがバナナだったような。
「椿、俺たちが両思いだと知ってたのか?」
「うん、だからふたりを幸せにしようって思った」
俺だったら…明るく振る舞えないだろう。椿を尊敬する。
「椿は私たちの恋のキューピットだね」
俺は…椿が居なかったら名前を呼ぶことすらできなかったかもしれない。
「椿、ありがとう、私が告白断ったのに、良くしてくれて」
「うん、大丈夫」
失恋はそよ風のようにふっと来てふっと去り、新しい恋を持ち込む。
なら、今度は俺たちが、
「今度、キューピットになるのは俺たちだよ。椿のこと、応援するよ。だから、今度は俺たちに相談してね」
キューピットにキューピットが恩返しをする。
考えてみればとても不自然な光景かもしれない。けれど決して皆がそう思う訳ではない。
椿に支えられ、実った恋は大切にしなければ。
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