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エピローグ
ーーー中学一年生 秋
私の好きな人は委員会が同じだったり、家が近かったり、共通点はたくさんあるのに名前で呼んでくれない。
「お前、シャーペン落ちてんぞ」
『お前』や、『あんた』など、なんだか変な呼び方だ。
「おい!落ちてるって!」
そんなことを考えていたのでボーッとしていた。
「あ、はいはい」
と言ってシャーペンを拾った。
何がなんでも名前を呼んでくれない。
私のこと、嫌いなのかな…。
そう思って自暴自棄になる毎日。
昔、女子の幼馴染同士が喧嘩をして、どっちのことも友達として好きだったのに、お互いの愚痴を聞くことになって。
結局ふたりは仲直りしたけど。
かたっぽは私を踏み台にした。
つまり、私が言ったことを話題に出して喧嘩を売ってきたのだ。
ふたりの愚痴を聞いてきたのは私だ。しかも、結果、どっちもどっちだと言うのに、それを言っても聞かない。
そんな毎日を半年近く過ごして、何も言わないほうがおかしい。
確かに言ったのは悪い。けど、自分が悪いと認めない。
もうひとりの幼馴染は、私の気持ちを分かってくれ、どっちもどっちということを認めた。
そしてかたっぽが言った私のことも分かってくれた。本当に感謝している。
私たちさんにんは家が近く、下校、愚痴をきき、疲れた私に声をかけてくれたのも、あの人ーーーー好きな人、海司だった。名前は呼んでくれないけど。
「ーーーーお前、疲れてるだろ」
海司が私に心配してくれた。
本当に優しい。
「うん、ちょっとね」
私は嘘をついた。本当はちょっとどころじゃないのに。
「ふーん。ま、あいつのこともあるしな」
あいつとは、幼馴染女子、喧嘩を売ってきた春妃だ。
「うん」
「それだけじゃないと思うけど」
え…?確かにそれだけじゃないけど、それを分かる訳ない。
「おーい!海司!」
海司の友達であり、私の腐れ縁の幼馴染の椿が海司を呼んだ。
「お、莉里と話してたのか、俺も混ぜて〜」
椿は私の好きな人を知っている。
私は上手く話せなくなるときもあるから、気を使ってくれているのだろう。
でも、それはいらない。
だって私と海司は結ばれることはないから。
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