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それでも、『人生のパートナー』に据えてくれたんだ。
妻としては名目だけだとしても、あたしが本当に欲しかったのは地位じゃなくて貴也の気持ちだから。
夫婦として、──「ともに歩んで行く同志」として。
男女の愛より家族愛に近い。ううん、そのものかもしれないわ。
だけど、それでもいい。改めて、心からそう感じたんだ。
「あ~、お風呂気持ちよかった。貴也、すぐ入る? あ、リビングにいるの?」
数歩後退って、あたしはわざとらしく声上げる。
「いや、部屋にいるよ。入ろうかな」
電話の向こうに「ごめん」って告げて切ったらしく、貴也がドアから顔を出した。
「はるか、新作アイス出てたから買って来たんだけど。イチゴの果肉入ったのと、キャラメルナッツだって。僕がお風呂から出たら一緒に食べよう。どっちがいい?」
「わ~、嬉しい。迷うなぁ。やっぱこういうのは買って来た人優先で」
あたしの返事に、彼はちょっと考えて答える。
「じゃあ半分こしようか。僕もどっちも美味しそうだな~と思ってたんだ」
「いいね!」
家族でもあるし、ただの友達みたい、かもしれない。
だけどあたしには、こんな些細なことで笑い合える日常が楽しいんだ。
百人居たら百人が「くだらない生き方だ」って鼻で笑うとしても、 あたしが満足してるんだから他人の評価なんてどーでもいい。
あたしは今、この『夫婦』生活が涙が出そうなくらい幸せだよ、貴也。
~END~
あニキさん@akuyaku_niki に描いていただいたイラストです~。
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