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◇ ◇ ◇
「ただいま! ゴメン、遅くなって」
残業して帰ってきたあたしを、貴也が手料理と共に迎えてくれた。
「おかえり~。今日は僕の当番なんだから、そんな慌てなくていいのに。もしもっと遅くなるなら、連絡くれたら先に食べるなりしとくよ」
穏やかな笑顔で、冷めちゃった料理の皿をレンジで温めてる貴也。
「ありがと! ……実はこれからちょっと忙しくなりそうだから、当番代わってもらわないといけないかも」
悪いけど、と申し出たあたしに、貴也はすんなり頷いてくれる。
「あー、いいよ。あとで当番表作り直そう。僕はまだしばらくは大丈夫だから」
「助かるわ〜。貴也も遠慮なく言ってよね。こういうの、ヘンに気ぃ遣い出したらぎくしゃくしちゃいそうだから」
今日はポークソテーに人参とブロッコリーの温野菜添え。あと、じゃがいもと玉葱のお味噌汁。うーん、いいなあ。
お腹ペコペコだけど、そうじゃなくても貴也の料理はホント美味しい。
ずっとお父さんと二人暮らしだったから、貴也は家事全般得意なんだ。
料理も、手伝い程度だったあたしとは比べるのが失礼なくらい上手だし。
あたしは結婚したばっかの頃、帰ってからご飯作るの慣れてなくてオムレツとレタス千切っただけのサラダと豆腐の味噌汁出したことあった……。
朝じゃないんだからさぁ! って自分でも恥ずかしかったけど、貴也は文句言うどころか一切不満そうな表情も見せなかったな。
「美味しそう! すごく綺麗に焼けてる、オムレツって難しいんだよね」
「……ゴメン。もっとちゃんと料理勉強するから。しばらく我慢して」
気遣ってる風でもなく褒めてくれる貴也に、あたしは顔から火が出そうだったよ。
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