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「はるかはまだ始めたばかりだから仕方ないよ。僕たちも、最初はハムエッグとか塩鮭と乾燥わかめで溢れそうな味噌汁とか、朝でも足りないよ! ってメニューだったなぁ。野菜なかったし。ご飯だけいっぱい炊いて『好きなだけおかわりしよう』っ言ってたな」
──お父さんと二人になった頃の話、だ。貴也が自分からそういうこと口にするの珍しい。どうしたって、お母さんの記憶に繋がるから。
あたしと居て、少しでもリラックスできてるからだとしたら嬉しいんだけど。
「でもさぁ、どっちも大変な時はもう割り切って外食でもいいじゃん? 部屋も散らかってたって死にゃーしないし」
我ながら雑過ぎるあたしの言葉に貴也は笑う。
「そうだよね。……やっぱはるかは話早くていいなぁ。二人とも相手のこといろいろ知ってるから、余計な説明とか全然要らないし」
「ホントだよね。だけど、家事分担てこんなに上手く行くと思ってなかったよ。職場の先輩たちの話でも、結局何もしなくなる旦那さんも多いらしいしさ」
本心から告げたあたしに、貴也は真面目な表情で返して来た。
「僕たちは信頼関係だけで成り立ってる『夫婦』だから。決まり事を守るのは最低限の仁義だよ」
本物の夫婦なら、愛情があるから甘えが生じるのかもしれない。
確かに、あたしたちは互いを信じられなくなったらもう終わりだよね。……ルームシェアでどっちかに負担が偏ったりしたら、それ以上一緒に暮らすのなんて無理だろうし。
あたしたちの『結婚生活』も、あっという間に半年が過ぎた。今のところ、何の問題もない。
職場の人や友達に対して、「夫婦」として貴也を「夫」って呼ぶのも慣れて来たわ。
これが正しいのかはわからないけど、──間違ってはいないと思ってる。ただの同居人でも、貴也の一番傍に居るのは、あたしだから。
これからも。
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