江戸時代でも暴言を吐くアリス

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江戸時代でも暴言を吐くアリス

 騒然とする侍たち。賭け事に負けて抜刀する侍、その周りであわあわするその他。  丁に賭けた左端の侍だけが気まずそうな顔をしている。 「この下衆(げす)が・・・」金髪の少女は呟く。 「無礼者! 卑しい女の分際で、分をわきまえんか!」  刀を構えた侍が大声で言い放つ。 「なんだと? お前みたいな下衆に言われたくねーよ。Fu〇k you! Fu〇k you! Fu〇k you!」  金髪の少女は暴言を吐き続ける。  武と猫はとっくに気付いている。  侍に「Fu〇k you!」を連発する金髪の少女がアリスであることに・・・ ―― あー、また面倒なことを・・・  アリスが切り殺されると困る。だが、アリスが騒いで仙台藩と戦闘になるのは避けたいところだ。  武が「どうする?」と聞いたら、猫は「死にそうになったら助ければ?」は呑気に答える。  抜刀した侍を取り押さえようとする周りの侍たち。抜刀した侍は刀をブンブン振りまわす。 「あぶねーよ」「城内でやめろよー」「殿が見てるぞ!」  侍たちが説得を試みるものの、ブンブンは止まらない。 「拙者が後ろから行くから、お主は前から取り押さえろ」 「前はあぶねー。お主が前から行け!」 「左右からも行った方がいいんじゃないか?」 「右は前よりあぶねー!」 「ここは不公平のないように、ジャンケンだ!」  侍の混乱は続く。  その間も抜刀した侍は刀をブンブン振り回して、アリスの方へ向かっていく。 「Fu〇k you! Fu〇k you! Fu〇k you!」  そう言いながら、侍に向かって中指を立てるアリス。 ――カオスだ・・・  これ以上は危険と判断した武はアリスを助けることにした。  侍にケガさせるわけにはいかないから、刀を狙ってリチウム弾を発射した。 “ボンッ!”  音が鳴るとともに粉々に弾け飛ぶ刀身。 「武士の命がーーーー!!」叫ぶ刀の持ち主(侍)。 「何者だ?」と周りの侍たちが武に警戒を強める。  茣蓙(ござ)の上に立つアリスは「たーけーしー!」と手を振っている。 「何やってるの?」 「侍からお金を巻き上げていたのよ」 「へー」 ――そんなことするから、こういう目に遭う・・・  武がアリスのもとに歩いていくと、侍たちが二人を取り囲んだ。  少年と少女を取り囲み、刀を抜く侍たち。もはや武士としてのプライドは皆無だ。 「助さん、懲らしめてやりなさい!」調子よく言うアリス。 「誰が助さんだよ? それに、黄門様はまだ生まれてない」とツッコム武。  ※水戸黄門(徳川光圀)は1628年生まれです。なので、この時点(1612年)にはいません。  これ以上騒ぎを大きくしたくない武は、猫に頼んだ。 「格さん、オジ宗を呼んできて」 「誰が格さんだ? まあ、いいか・・・」  そう言うと猫は城の方へ走って行った。  じりじりと迫ってくる侍。 ――家来を倒したら、オジ宗怒るかな?  武の心配を余所に、丸腰の少年に対して切りかかってくる侍。10歳の子供に大人げない。  武はしかたなく侍の刀を粉砕する。 「きゃー、たけしー!」アリスは喜んでいる。 「拙者の命がーーー!!」侍は悲しんでいる。  学習しない侍。刀を折られても、次々と武に襲い掛かる。  面倒くさくなった武は、圧縮した水素で侍を3人吹っ飛ばした。 「きゃー、たけしー!」  何が起こったか理解できない侍たち。「アヤカシの類か?」「妖術使いか?」と話し合っている。このままでは勝てないことを悟った侍は仲間を呼んだ。 「曲者じゃ! であえっ! であえっ!」  でも、ここは城の端っこ。声は仲間に届かない。 「一旦、退却を!」「何を?武士の恥である!」  侍たちは逃げるか戦うかを議論している。  そうこうしている間に、武は近くにいた侍2人を吹っ飛ばす。  吹っ飛ばされた方向には中年男が立っていた。 「「殿!!」」  侍たちは自称伊達政宗に跪(ひざまず)いた。 「お主ら、この者はワシの客人じゃ。無礼は無かっただろうな?」  気まずそうに下を向く侍。オジ宗は「どうなのじゃ?」と質問する。 「いえ・・・何も・・・ありません。ちょっと稽古を・・・」  武にアイコンタクトを送る侍。口裏を合わせてほしいらしい。 「オジ宗の部下と稽古してたんだ。刀を何本か折っちゃったけど、いいよね?」 「大丈夫です!」 「お気になさらず!」 「真剣で稽古をお願いしたのは拙者たちです!」  オジ宗は「そうか」と呟いた。 「ところで、そろそろ会議が始まるぞ。参ろうか」  オジ宗はそう言うと、城に向かって歩き出した。
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